「伝統」や「文化」を後世に継承しなければならない。そんな話題を、様々なシーンで耳にする。なんだか、カタクルシイ。「伝統」や「文化」なんて、とっつきにくい、難しい、古臭い、かたくるしい。そんな印象。でも、本当にそうなのかな。そうやって、私たちが勝手に目を背け、距離をおいている。それだけな気がする。

笑顔を誘う身近な存在

　例えば旅先で、何気なくテレビの画面に映った空を見て「あ、宮崎の空」と思うことがある。そうするとスポーツキャンプのニュースだったり、郷土料理の特集コーナーが始まったりする。映像を見ながら、ほんの少し気持ちが動く。誰かにくすぐられたように、自然と顔がほころぶ。それは、見慣れた「いつもの空」に日々繰り広げられる日常と、たくさんの思い出が詰まっているから。自然と親しみと安らぎを感じるから。毎日、毎日、知らず知らずのうちに積み上げてきた、何気ないけれど懐かしい思い出と結びついているアレやコレ。もしかしてこれが「文化」なんじゃないかな。あれ、意外と身近だったことに気づく瞬間。

長い間ずっと心くすぐり続けてきたもの

　ずっと先の未来のお花見は、ハンバーガー片手に海外のお友達と、というのが当たり前になっているかもしれない。でも、きっとその時も、だれより「お花見」を楽しんでいるのは私たち。だって、ずっとずっと昔から、梅や桜の木の下で春の訪れを喜んできたから。皆で花を囲み、あたたかな春が巡ってきたことを祝う、四季巡る日本の文化。

　雨に咲くアジサイ、夏の線香花火、秋のお月見、お正月には初詣、お母さんが握ってくれたおにぎり、お父さんの晩酌のモロキュー、おじいちゃんと指した将棋、おばあちゃんが着付けてくれた浴衣。日本人とか、ふるさととか、家族とか、気恥ずかしくてあまり意識することはないけれど、その小さな、けれどどうしようもなく大切な集団の中で、長い間ずっと、時には形を変えたりしながら、人々の心をくすぐり続けてきたもの。それが、「文化」。

なくなったらちょっと寂しいって思う存在

　「伝統」「文化」。言葉で聞くとなんだかお堅い印象だったけど、実は、いつもそばにあって、私たちの気持ちをほっこり、緩めてくれるアレコレのことだったんだ！何気ない日常で、気持ち動かされるアレコレのことだったんだ！そんな風に考えると、「伝統」や「文化」がなくなってしまったら、きっと物足りない日常になる。そんな風に考えると、「伝統」や「文化」がなくなってしまうのは、ちょっと寂しい。ずっとずっと昔から、私たちの気持ちをくすぐり続けてきたもの、子どもたちにも残していきたい。100年先の宮崎人も、広く青い空の下で、焼酎を飲んじょってほしい。

「じゃあ、私は？」って、考えると少しだけドキっとする

　うちのお母さんは、浴衣の着付けができるんです。お父さんは、なんだかやたらと物知り。おじいちゃんの晩酌は焼酎に梅干が定番。おばあちゃんがつくる煮物は、なんで？ってくらいおいしい。アレもコレも「文化」なんだな、引き継がれてきたんだなと思う。「じゃあ、私は？」、そんな「問い」にぶつかった。

　「伝統」や「文化」は、時代とともにカタチを変えてきた。でも、根っこの部分はきっと変わってない。だから私は、私なりの「こころくすぐられる時間」を大切にしていこう。そうやって積み重なった「こころくすぐられる時間」が、遠い未来に「伝統」や「文化」を残していくことに繋がっているんだ。

はじめの一歩を踏み出す３日間

　こう語るのは、『月夜の青島』ワークショップコレクションを担当する市文化市民活動課の壹岐さん。想いが溢れすぎです。おそらく、「伝統」や「文化」に対する意識やイメージは人それぞれ、そんななか、「構えず、身の回りにある“文化”に気づいて、繋げていってもらいたい。」と壱岐さんは言います。新たな知識と学びの入口となる3日間、『月夜の青島』、文化に触れる夜を堪能してみませんか。

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